記憶の掘り起こし方
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写真1枚目はドイツのシュトゥットガルト市立図書館。

この写真を見て、この階段の踊り場で誰かと誰かがすれ違うイメージが浮かんでいるのだけど、それがなんだったか思いだせない。






……思いだした。

「ベルリン・天使の詩」の図書館のシーンだ。
写真の2枚目。ベルリンの国立図書館が舞台。
踊り場に座る老人を通りかかった天使が見ている。
 
 
……さらに思いだした。
 
年末に読んだ文章に「平和は退屈だ」という文言があって、それを読んで
平和な時代に英雄は登場しないもんなぁ、と思い、だから「平和の叙事詩は生れない」と思って、あれ、これ私が考えた言葉じゃないよね、どこで読んだ言葉だった?と気になりだして。
ずっと考えてたわけじゃないんだけど、時々、飴をなめるみたいに心のうちで転がしてた。


……そして繋がった。

踊り場の老人は詩人ホメロスで、これから語るべき物語を探していた。

「だれひとり平和の叙事詩をまだ、うまく物語れないでいる。なぜ平和だと誰も高揚することがなく、物語が生まれにくいというのか」

このセリフを「平和は退屈」から連想したんだな。


前後の文脈をあわせるとこう。

「幾世期をも往来するかつての大いなる物語はもう終わった。今は一日一日を思うのみ。勇壮な戦士や王が主人公の物語ではなく、平和なもののみが主人公の物語。乾燥たまねぎでもいいし、沼地の渡り木でもいい。だれひとり平和の叙事詩をまだ、うまく物語れないでいる。なぜ平和だと誰も高揚することがなく、物語が生まれにくいというのか。あきらめろだと?私があきらめたのでは、人類は語りべを失う。語りべを失うことは、人類の子供時代もなくなることだ」
 
 
……半月かけて映画のセリフを確認したってだけの話なんだけど。
 
 
記憶を掘り起こす過程が実感できて面白かった。
意識の底のほうで関連する言葉や映像を探してたんだろうなぁ。
だからたまたま見た国立図書館に似た図書館の写真にひっかかった。


……さらにオチがある。


いま試しに「平和の叙事詩は生れない」とGoogleに放り込んでみたらトップに「ベルリン・天使の詩」が上がってきた。
検索時間は、0.53秒(笑)

私の記憶の3千京倍くらいはあるデータを一秒足らずでさらってくるんだね。
ネットクラウドとか人工知能とかすごいなぁ。


……でも、半月前に検索してたら。

美しい図書館の階段のイメージを堪能したり、すれ違う誰かと誰かの姿を想像したり、叙事詩なんて普段使わない言葉の響きを味わったりはできなかった。

一秒でわかるものを半月温める、こういう無駄を楽しめるのが人間らしさ、だよね。


……負け惜しみじゃありません(笑)








コメント

はち
2017年1月17日14:48

大切なのは、答えではなく、そこにたどり着く道筋である
美藤さんの日記を読んで、効率一辺倒の現代の風潮を揶揄するこの教訓が浮かんでいるのだけど、それをどこで読んだのか思いだせない
エンデのような気もするけど、違うような、でも検索しないことにします

美藤
2017年1月18日11:47

いつかどこかで読んだフレーズ、遠い昔に見たシーンがふっと立ち上がってきて「ああ、なんだったっけなぁ・・・」って心を遊ばせてるときの心地良さ。たぶん出典はそれほど重要じゃないんですね。パズルのピースがはまればそれはそれで楽しいですけど。

普段は、「ほら、あれ、あれ・・なんだっけ?」が多くなり、スマホで検索する場面もかなり増えてますけど(笑)

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