樹の鳴る音

2021年12月14日 散歩道
樹の鳴る音
樹の鳴る音
 
 
秘密の裏庭。
天気が下り坂だというので、昨日陽射しの暖かな午後に。

紅葉の終わりと結実の盛り。
ああ、ここは晩秋から冬が良いなぁ。
春・夏ももちろん美しいけど、虫が多くてゆっくりできない。
虫、嫌いじゃないけど、のべつまくなしに襲ってくる蚊はうるさくてのんびり座ってもいられない。初夏の毛虫の季節はうっかりベンチに腰も下ろせないし、樹の上から降ってくるし。


ここにくると、ひとりごとが多くなる。
踏んで歩く草地の柔らかさに、わぁ~ふかふかだね~。
カエデの赤い絨毯に、わぁ~すご~い。
きれいだねぇ~美しいねぇ~、ああ~なんて気持いいのぉ~。
大きな樹や枯れ草やもぐら塚や、赤や青や黄色い実に、愛してるよ~と伝えたくなる。声にだして。
犬や猫に話しかけちゃうひと以上に怪しいかもね。
でもいいの、誰もいないんだから。


   ・・・

強く風が吹いて、スギかなヒバかな、大きな針葉樹が鳴る。
広葉樹の軽い葉擦れの音ではなくて、樹全体が揺れて軋んで立てる重たい音。
ギーゴゴゴゴ。ざわざわざわ。
そして良い匂いがする。アロマオイルでシダーウッドなんて名前がついてる匂い。それの最高にフレッシュな。
ここでは黙って耳を澄まし深く呼吸する。

竹林が鳴る。
カラカラカラカラ、、、コーンコーン。さわさわさわさわ、、コーン。


   ・・・

今日は雨が降っている。
雨の音も好きだし雪の日の静寂の音も好きだけど、自然の音の中で樹木の鳴る音が一番好きかもしれない。


   ・・・

風が大きく樹を揺らすのを見ながら樹の鳴る音を追って歩いていて気が付いたんだけど。
ひらけた草地の上空を軍用機が何度もなんども横切って飛んだ。
西に向かって、福生の方角かな。旅客機と違って低い位置を飛ぶからひらけた野外でも、聴いている風と樹の音とはあきらかに違う音が混じってきて耳に障る。
日本の制空権はアメリカのもの、というのを思い出してしまう。







エノコログサの草原
 
 
気持のよい日だった。
秘密の裏庭はエノコログサの草原になっていた。

ひんやりした空気の中、背中を陽の光で温めながら踏み分け踏み分け歩く。
ジーンズとスニーカーがひっつき虫だらけに。



2~3ミリしかない小さな種は、触ってみるとベタベタとして取りにくい。
この草原から脱出するまでにどうせまた種まみれになるのだしそのままに。

陽を浴びて光る草原を飛び交うトンボを追い、ソバの花に集まるベニシジミやヤマトシジミを眺める。缶コーヒーを飲み終えて草原をでる。
ちいさな野球グラウンドのベンチに座って種を払うことに。

ちまちまベタベタした種を取るの時間かかりそうだなぁと思ったら。
シューレースもジーンズも、ぱんぱんと軽く叩くだけで種は落ちた。
くっついてすぐはベタベタしてたのだけど、小一時間で乾燥してた。

あ、そっか。
ずっとジーンズにくっついてたんじゃ駄目なんだもんね。
運ばれてどこかで落ちなければ。

なるほどねぇ~って、なんだか感心してしまった。
私にくっついて500メートルくらいは移動に成功したかな。
でもマメに整地されてるグラウンドの脇だから、花咲かせるのは無理かも。
ごめんね。





金色の雨を降らす樹
金色の雨を降らす樹
 
 
フクロミモクゲンジの花が降っていた。
まだ緑色濃い下草の残る足もとに黄色いちいさな花が散り敷かれていた。

英語名をGolden Rain Treeという。
金色の雨を降らす樹。


どこから?
次々に降ってくる花に視線をあげる。
高木ばかりが並ぶ林のなかの一本が黄色く染まっていた。
木の名札にフクロミモクゲンジとあった。
15メートルくらいある? 足もとと自分の背の少し上くらいまでを見て歩いてたので視界にはいってなかった。拾い上げてみた花は小さくて、つぎつぎと降りそそいでこなければ気が付けなかったね。

ひとつひとつの花、なんて可愛らしい。
濃い黄色の花びらに蕊の根元の鮮やかな赤。
降ってくるのは雄花なんだって。
花びらを反らせて、花粉を飛ばして散る。受粉した雌花は袋状の果皮に包まれた実を生らせる。
フクロミモクゲンジのフクロミは「袋実」なんだね。
モクゲンジは「木欒子」、中国原産の名前は難しいねぇ。

「欒」は団欒の「らん」だね。
欒の意味は、モジナビで見たら「まるい」「親しい人が集まって、和やかに楽しむさま」「もくげんじ・ムクロジ科の落葉高木」ってある。

へぇ…。
さきにこの樹の姿があるのかなぁ。
ちいさな黄色い花がたくさん集まって咲いてるところや、薄紅色の果皮がたわわについてる様子、うん、なんだか楽しそうなんだよ。
団欒って、この樹の実りのときの姿なのかも。

今日は幸運にも、花散るフクロミモクゲンジと実をつけたフクロミモクゲンジの両方を見ることができた。
花が降ってこの樹に気が付いて、写真撮りながらスマホで調べていたら、すこし離れた場所にも同じ樹があるって書かれてる記事があって。探して見たら結実した個体だった。高低差のある敷地内で、雑木林の中と開けた場所とで環境がすこし違ったのかな、一週間か十日くらいの変化を見ることができた。

植物の変化って思いのほか早いから、数日違っていたら、金色の雨には降られなかったろうし、そうしたらこの団欒の樹には出会えなかったねぇ。

やっぱり年間パスポート作るしかないか。
いや、近所に引っ越して週に三回は散歩に来ないとこの濃密な樹々の変化を見届けることできないなぁ。
ああ、ほんとここ素敵だ。小石川植物園でした。





ピクニックがしたい。
 
 
連休明けの平日、午後4時。
湿度が低くて、空気が澄んでいて明るい木陰が気持ちいい。
太陽は眩しくて、うっかりすると日焼けしそうだけれど、もう真夏の凶暴さはない。

今日のような、夏に属する秋の日はもうそう多くはない。
もう一度雨が来たらひんやりとした秋が来る。

キャンプじゃなくてアウトドアなんちゃらじゃなくて、ピクニックがしたい。
レジャーシートじゃなくて、ウールのブランケットを敷いて。
コンビニお握りじゃなくて、ピクニックバスケットにバケットサンドやタルトやチーズやソーセージやフルーツをつめて。

スーラの「グランド・ジャット島の日曜日」の絵みたいに?
と思って画像検索したらみんな飲み食いはしてないのね。それにひと多すぎる。
モネの「草上の昼食」かな?こっちもなんだか暑苦しいか。
どっちもマスク外せないじゃない。

そんなこと言ってるうちに夏に属する秋は去ってしまうんだけど。





カカオの香りの森
 
 
彼岸花が満開。

大好きな雑木林にいると2時間3時間なんてあっという間。
空気がほんとうに良い匂いだ。
黄葉前の落ち着いた緑のエーテルに希釈された金木犀や秋の花の匂いが清々しい。

ヤマナシの実がいっぱい落ちていた。踏まずに歩くのが大変なくらいに。あたりにカカオのような甘い香りが薄く満ちていた。拾って鼻に近づけても嗅ぎ当てられないんだけど、朽ちて崩れている実もたくさんあったからそれの香りかな。チョコレートの森にいるような感じ。

カリンの実はまだ小さくて青かった。



シマサルスベリの明るい林
 
 
曇り、ときどき晴れ。
最高気温23度、湿度50%、北北東の風2m。

ひさしぶりの雑木林日和。
シマサルスベリの明るい林を歩いてきた。

雑木林を道なりに歩いて、ゆるく左に曲がるとシマサルスベリの大樹の林に出る。去年初めて目にしたとき、白く乾いて清潔な大きなおおきな骨が並んで柔らかく光っているように見えてハッとした。暗褐色の幹が続く雑木林の中でそこだけ、ふんわりと明るい。
15mくらいはありそうな高木なので林の空間が広く、灰白色の木肌のせいもあって雑木林の中で印象が変わる。
近くで見ると、幹はゆるい螺旋を描きながら伸びている。

花はサルスベリに比べると白花で地味目らしい。花期はもう過ぎてしまったのかな。でも高木なのでよほどひらけたところにないと見られないかも。紅葉するらしいのが楽しみ。
大樹なのだけど、たおやかな優しい気配のする木。





みどりみどりみどり
みどりみどりみどり
みどりみどりみどり
 
 
あしもとに、みどり。

みあげると、みどり。

緑の坂道をあがってみどりの窓辺で本を読む。
窓ばかり見てしまう。






若葉に白花

2021年5月22日 散歩道
若葉に白花
若葉に白花
 
 
丘陵地の公園へ。

ヤマボウシの花が咲いてた。
柔らかい緑色の葉と質感のある白い花。

庭木でも見かける樹だけど、街中だと伸びやかさがない。
横に張りだす枝葉とそこに咲く花で空間が埋まる。美しいなぁ。

同じ優しい緑葉に白花をつけるエゴノキも大好きなんだけど、時期が遅かった。
エゴノキは散る姿が好き。花びらが散るのではなくて、花首ごと落ちるのだけどその散る様がほんとうに愛らしい。ぽろんぽろんと音が聞こえてくるようで。
落花。ツバキは、ぽと、ぽと。エゴノキは、ぽろんぽろん。誰か楽器で表現してくれないかな。


下の写真は、去年のエゴノキ。
花は葉に隠れるように下を向いて咲く。
なにもかもが可愛らしいい花木。





大樹

2021年2月25日 散歩道
大樹
 
 
楠若葉見上げて神に近づけり 
   
          神山白愁
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
もぐら塚のある庭
 
 
ぽこぽこ、ぽこぽこ。
もぐら塚がいっぱい。


父の納骨をしているお寺へ初詣を兼ねてお参り。
そこから秘密の裏庭へ。

雑木林の中の明るい草地にたくさんのもぐら塚が。
いつも見かけるけど、年末年始で庭のお手入れもお休みだったからか、一面にぽこぽこ。
地下の耕作員がせっせと働いているから、ここの草地はいつ歩いてもふかふかで気持ちが良いんだなぁ。

「もぐら」とか「もぐら塚」で検索すると、駆除とか被害、害獣という言葉がいっぱいで、植えた作物の根を切るからと農家からは目の敵にされてるらしい。
そうなのかぁ。

この裏庭はなにかを生産するための場所ではないから、もぐらも安心して地下耕作作業ができるね。私はそのふかふかの耕作成果を足の裏で享受する。










秘密の裏庭
 
 
10月11月の休日は、天気が良ければ公園にでかけた。
新宿御苑、神代植物公園、湿性植物園、小金井公園、小石川植物園。

小石川植物園がとても良かった。
映画「赤ひげ」の舞台、小石川養生所があったとこらしいくらいの前知識しかなかったんだけど、行ってみたら23区内とは思えないほど大きな樹々が連なる素敵な雑木林が広がっていた。家から小一時間かかるのだけど、ターミナル駅を避けて行けるルートがあるのでアクセスも悪くない。

Googlemapを見ていると、案外、都心にまとまった広さの緑地が多いって気づく。大名屋敷があったところだったり、寺や神社だったり。
寺の境内の、大きなイチョウの木一本でも見惚れてしまうのだけれど、小石川植物園で何種類もの巨木が聳え、何層にも枝葉を重ねている中にいると呼吸が深く静かになってほんとうにリラックスできた。
なんならテント張って2泊ぐらいしたいくらいだ。また行こう。


そしてもう一か所。
毎日でも訪れたい場所を見つけてしまった。
行こうと思えば毎日でも行けるくらいアクセスのよい距離に。
なにが素敵って、誰もいない。いるんだけど、いないのね。
自由に歩き回れる面積はたぶん10万㎡くらい?
11月の19日かな、あの夏日のような暖かく穏やかな日に出かけて行って、雑木林の真ん中にある明るい草地に座って本を読んでたんだけど2時間くらい視界に誰も入ってこなかった。あ、本読んでたは嘘。その場所があんまり素晴らしすぎて、その日があまりに美しすぎて、ただぼおっとしてただけ。
ここは宇宙に繋がってるんだなぁ、、、なんて思いながら。

ちゃんと手入れはされているけれど大名庭園のようには造りこまれていない雑木林も美しかった。靴底通して足の裏に感じる土がどこもかしこも柔らかくて、ここを踏んで歩く人がほんと少ないんだなってわかる。
ここは私の裏庭に決めた。独り占めしたいので、場所はナイショ。














錦木

2020年10月20日 散歩道 コメント (2)
錦木
 
 
ニシキギ(学名:Euonymus alatus)
錦木と漢字で書くほうが似合うね。そのまんまの色合い。
まだモミジは青いけれど、ニシキギは一足早く紅く染まってた。

この虫はなんだろう。
ブルースチール合金ロボのような。カッコいいね。


「錦木」ってなにか古典にあったような。源氏だっけ?
お能の演目だった。



諸国一見の僧が、従僧と共に陸奥国狭夫の里(秋田県)にやって来る。そこへ錦木を手にした里の男と細布を持った女が現れて、恋の思いを懐かしんで語る。この地方には、恋した女の家の門に錦木を立て、女がその錦木を家に取り入れれば、男の思いがかなったしるしという風習があるが、3年間錦木を立てるために女の家に通ったものの、思いを遂げることなく死んだ男の塚があり、それが錦塚と呼ばれていると話す。そして、二人で僧をその塚に案内し、塚の中に消えてしまう。     < 世阿弥作:錦木 >



そういえば、10月は新宿御苑の薪能だ。
去年は雨でホール公演になり、かなり残念な鑑賞になってしまったんだった。
今年は…。日程確認することすら忘れていて、先日、御苑の風景式庭園を歩いていて、そうだ薪能ここでやったんだと思い出す。

今年は、中止になっていた。

去年、能の後に新大久保まで歩いて韓国料理を食べた。
ハルミさんとも、もう一年会ってないんだなぁ。
年単位の時間が、散りぢりに消えて行ってる感覚。









百日紅
 
 
サルスベリ。大好きな夏の花木。

夏の花木では、青空に映える夾竹桃やふんわり優し気な木槿も良いけれどね。
キョウチクトウは公園の垣根とかでよく見かけたけれど、毒があるのでいまはあまり植えられなくなったらしい。ムクゲも大好きだけど、開花して昼にはしぼんでしまうのでなんとなく儚げで淋しい。そこが良いのだけど。

ムクゲとサルスベリ、どちらも鉢植えがあるのだけど、一向に花をつけないサルスベリを今年、庭におろした。おろしたら、ぐんぐん伸びて、私の腰の高さだった樹高が肩を超えた。花も咲いた。まだ数は少ないけど。ただ、ひょろーんと伸びた枝で、このまま伸ばしていいのか、放っておいたらどんな姿になるのかわからなくて悩む。どこで切ったらいい?


どんな木でも自然樹形が美しいと思うけれど、サルスベリの丸くこんもりと花をいっぱい咲かせる姿が好きだ。横枝が張るので広い空間がないと映えないけれども。街路樹にも植えられてるけれど、街路樹にされた木は毎年毎年強剪定されて枝が縮こまって可哀想になる。それでも初夏から枝を伸ばしてけっこうな花房をつけるから、サルスベリは強くて健気な夏の木だね。盛夏から秋まで長く咲くのも良い。

自然樹形でこんもりとした姿になって欲しいけど、何年かかるかな。
間にあうだろうか?



駅へ向かう途中に小さな祠があって、そこに桃色のサルスベリが植わっている。
樹高は3メートルくらいかな。よく手入れされていて、私の頭くらいまでの下枝は払われていて、横に張った枝がきれいな半円樹形を描いていて、すべすべの幹の曲がり具合も見目麗しくて、通りすがりに眺めるのが楽しみで。

でね。
この木、きれいだよねぇって話をしたいのに、できる相手がいない。

サルスベリの木の隣にクリーニング屋があって、その店の場所を説明してた時に
「ほら、大きなサルスベリのとこの…」って言っても
家族1「サルスベリなんて生えてたっけ?」
家族2「サルスベリってどんなの?」

あんなに目立って綺麗な花木なのに見えない人には見えないのだねぇ。
もったいないなぁ。

うう、説明抜きで道端の雑草や庭木の話、季節の花の匂いの話をしたいよぉ。
キンモクセイが匂ったね、って言って「どんな匂い?」ってきかれても説明できないんだから。つうか、説明したくないです(笑)






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