12月中旬の、晴れた日の午後1時。
毎年、モミジの美しさにはっとする。
階段を降りきったところで、玄関の硝子格子の向こうにモミジが真っ赤に燃えているのが目に飛び込んでくる。本当に一瞬息を呑む。
冬至前の低い太陽の光が射しこんできて、赤と丹と紅と金のモザイクが踊るように煌めいている。はっとして、胸が開かれるような心持になる。毎年毎年、不意を突かれて感動している。
無駄と知りつつ、レンズを向けてしまう。
幾百、ショットを撮りこんでも確認してがっかりするだけなのに。
でも、がっかりすることで、目の前のモミジが素晴らしいって確認したいのかな。あの一瞬に観たモミジがどんなに美しかったか、って。
スマホカメラの性能が良くなったので、植物の写真もなんとなく小洒落たものが撮れたりする。うんと寄せて撮れば、花の写真なんかはそれなりに見える。
でも、モミジの写真は難しい。美しさのスケールが大きくて、手に負えない。
………と、毎年同じこと思うのに、でもシャッターをタップしてしまう。
この美しい樹を私のものにしたくて。
私が所有している樹なのに。
なのに、この樹の美しさが誰のものにもならないって知ってるから。
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