A Brighter Summer Day*
2018年6月3日 映画シャオミンが医務室を出てくる。
廊下の窓際にいるシャオスーに気がつく。
シャオスーのほうへ歩いてゆく。
シャオミンの姿は画面の左へ切れる。
カメラは追わない。
そっと右に振れて白く塗られた壁を映す。
ふたりの影が淡く揺れている。
ふたりの声が聞こえている。
ふたりが並んで歩きだすとカメラも首を振って姿をとらえる。
階段を降りるふたりを見届ける。
この1分ほどのワンカットが「牯嶺街少年殺人事件」のなかで一番好きかもしれない。
カメラが右に動いた瞬間、ああ、、と思う。
カメラの気持がわかってしまう。
会話は聞こえるし、ふたりの影をとらえてはいるけれど、そっと目を逸らすその気持ち。
なにもかもが清潔なんだ。
学校の医務室。白と薄緑に塗られた壁。明るい廊下。
ふたりの距離。声。
すべてが未満。
予感ですらあまりに薄く、まだ形にもならない。
今日は梅雨入り前の暑くさわやかな一日で、樹々の葉は青々と瑞々しく、半袖の腕にふれる風がやさしい。庭できらきらと輝くレモンの葉を見ていたら、この映画のこのカットを思い出した。
A Brighter Summer Day―――
地球がまわっている限り、美しい初夏はなんども訪れるけれど。
人生に一度だけの、過ぎてゆく輝かしい初夏が数日だけあって、その陽ざしの中にいるものはそれには気づけない。
だから、それを知っているカメラは、私は、そっと目を逸らすしかない。
http://www.dailymotion.com/video/x40jron
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