小学校の図書室で読んだジャック・ロンドンは「白い牙」。そして「野生の呼び声」。そこで止まってた。少年少女向けの、動物物語…と。
もったいことしたな。
「野生の呼び声」がどんな話だったかもおぼろげだったけれど、懐かしさと、『犬物語』のタイトルに惹かれて読みだす。
「火を熾す」はボーナスのような一編。『犬物語』のタイトルに反して犬が登場しない。「火を熾す」には2バージョンあると解説にある。そう言われたら犬が出てくるほうも読みたくなるでしょ、、と、まんまともうひとつの短編集『火を熾す』に誘導されてしまう。
ジャック・ロンドン、100年読み継がれてきた作家なんだなぁと思う。
無駄な描写がない。無意味な感傷がない。
森林限界線の向こうの荒野で、ぎりぎりの命を繋ぐ野生の獣そのもの。
圧倒的な自然の中では、オオカミにもひとにも、死は容赦なく公平に訪れるけれど、最後の瞬間まで生きることに執着する。静かに。Full Lifeだ。
ヘミングウェイの「老人と海」を連想した。
人生は静謐な苦闘だということ、闘っても結局は負ける、それでも生きるしかない。最期まで。
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