「パフューム」

2018年9月13日 映画
「パフューム」
 
 
「香水」を読んだときに、これをどう映画にするんだろうなぁ、って思ったのだけど、考えてみたら匂いを読書体験することも不可能なんだから、疑り深く避けることもなかった。

映像が陰影と奥行きがあって美しかったし音楽も良かった。
匂いの再現はもちろん不可能だけど、これでもかと匂いのもとを映し出して、こちらの匂いの経験を掘り起こそうとしている感じ。

主人公のジャン・バティストのセリフの少ない切実な演技も良かった。
原作では彼の姓グルヌイユ(カエル)の名の通り醜い男だったかと思うけれど、映画だから感情を添わせられるくらいの見た目の青年で。


小説にしろ映画にしろ、「匂い」について考えるのは楽しい。
香りで世界を征服することも可能かもしれないという妄想も含めて。

五感のなかで嗅覚が突出して生まれついて、匂いで世界を把握しながら成長したらどんな人間ができあがるんだろう。たぶん考え方自体が他の人間とは違ってしまうだろうし、“考え方”の根本にある言葉を獲得できるのかどうかも怪しいような気がするし、彼と深くコミュニケーションできる人間は存在しなさそう。匂いは本能や感情に強く働きそうだけど、理性や論理を育てるのには向かなそうだし。
そう思うと、ジャン・バティスト・グルヌイユは映画で見るより実はもっと“怪物”だろうと思う。
彼が “愛を求めた” 的な終わりだけど、たぶん彼の愛と私たちの愛とは異質なものだろう。彼が愛を得られるわけがないし、求めたものが愛なのかも疑問だ。



でもこの物語がいつも気になってしまうのは、匂いで世界を見ることができたらどんなだろう、という好奇心が捨てきれないから。
グルヌイユが完成させた究極のパフュームも嗅いでみたいような…あぶないあぶない(笑)









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