時間/彫刻‐時をかけるかたち
2019年6月3日 すこし遠いどこか。高い天井、白く塗られた壁、高い位置によっつ並んだ縦長の窓。クラシカルな空間にふんわりと浮かんで泳ぐ透けるグレイの布。
何日か前に、Twitterで流れてきた動画が気持に残った。
この場所で、ながめたいなぁと思った。たぶん、きっと好きだ。
東京藝大キャンパスにある陳列館が会場で、鶯谷のライヴの日に観に行けるかもしれないと思った。
上野の森、行けば楽しめるだろうと思う展示がいつもいっぱいあるのだけれど、なかなかそのためだけに出かけてはゆけなくて。ひと混みも嫌いだし。
これは芸大の学部展だし空いているんじゃないかなと期待して寄ってみることに。
公園口から入って、予想通りのひと混みを避けて木立の中に逃げこむと、新緑の香りと風にそよぐ樹々の音が心地良い。自然樹形のまま枝を広げる大きな木がたくさんあるのは良いなぁ、樹齢どのくらいだろうと考えながら「東京骨灰紀行」を思い出す。戊辰戦争でここは焼け野原になったんだっけ、そうだここは死屍累々の代表地だった、、なんて。焼け野原から樹高20メートルのケヤキが育つまでの時間を思う。150年あまりの時間。
木立を抜ける。泣く子も黙る天下の国立科学博物館のシロナガスクジラを横目に、「国宝 東寺」の特別展をやっている東洋館も通り過ぎて芸大キャンパスへ。
おなじ上野の山に隣接しているのだけれど、公園エリアと大学エリアで明らかに空気感と時間の流れが違う。今日の数時間に訪れて去ってゆくひとたちと、ここで数年単位の時間を過ごすひとたちと。もちろん私も前者のひとりなのだけれど、時間を欲張らないで、立ち止まってキャンパスの片隅にお邪魔する。
思った通り、芸大の陳列館はひともまばらで、訪れる人も静かな気配を持っていてとても居心地が良かった。
観たかった「時間/彫刻‐時をかけるかたち」も。
なんの説明も必要としない、こういうインスタレーションが好きだ。観れば、時の流れが風になってかけてゆくのがわかる。時の揚力にひるがえる布は優しい空間で柔らかく踊りつづけている。この布になりたい、と思う。
「時間/彫刻‐時をかけるかたち」
東京藝術大学大学美術館 陳列館 2019.5.30
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