「ウルフ・ワークス」
2020年2月6日 音楽ああ、このバレエ、とても好きだ。
「ダロウェイ夫人」
「オーランドー」
「波」
ヴァージニア・ウルフの代表作の三幕ものなのだけれど、「波―火曜日」がことに良かった。冒頭で朗読されるヴァージニア・ウルフの遺書。コール・ドのダンサーが白く泡立ち崩れる波がしらのように大きく小さくさざめくように踊る。ウルフ役のアレッサンドラ・フェリがすこしずつ距離をつめてゆく。波と戯れるようにおずおずと近づき、波たちも初めは遠巻きに寄せては引く。やがてウルフと波は打ち解けて、最後は呑み込まれ彼方へ運ばれてゆく。
マックス・リヒターの音楽が、くりかえしくりかえし寄せては返す波の気配を奏でていて。
映像で観て良かったなぁと思うのは、アレッサンドラ・フェリの表情がとてもよく観られたこと。この方は女優だなぁ。引退していたのだけれどこの作品に主演するために復帰したのだとか。50歳という年齢がウルフの役柄にとても似合っていた。若いダンサーにはない顔の皺や首の筋が作家ウルフの精神を表しているように見えて美しかった。
「ダロウェイ夫人―今の私、かつての私」で、ダロウェイ夫人でありウルフそのひとでもある女性が「かつての私」を柱の陰から眺める、その佇まいにも引き込まれて観た。
括りで言ったらコンテンポラリーなのだけれど、20世紀初頭という時代のクラシカルな優美さがあって。小説作品がモチーフだけどストーリーをなぞる感じではなく、ウルフの情感のある世界が舞台の上に立ち現れていた。クラシックバレエの大仰な舞台は飽きてしまうし、キレッキレのコンテンポラリーはチカラ入っちゃうから、すごく観やすいバレエ。好きな世界観。
「ダロウェイ夫人」は原作を読んでいて、映画「めぐりあう時間たち」は観ていた。「オーランド―」は映画で観た。主演のティルダ・スウィントン好きで。
「波」読みはじめた。
英国ロイヤル・バレエ
振付:ウェイン・マグレガー
音楽:マックス・リヒター
これ、英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマシーズンでやったらしいから、映画館の大きなスクリーンで観られたら良かったな。
2016/17冬のシーズン上映だから、う~ん、マックス・リヒターにまでまだ辿り着けてなかったか。
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