春の匂い
 
 
いつも立春を過ぎたころかな。
ほんのすこし寒さが緩んで、雨が降った翌朝なんかに嗅ぐ匂いがある。

知ってる匂いだ、と思う。
土臭さの混じった醗酵臭。

父が盆栽に使っていた水肥の匂い。
油粕や魚粉、鶏糞なんかを水に溶かして寝かせ、発酵させた肥料。
盆栽やる人はこれをそれぞれのブレンドで作ってるらしい。
父も作ってペットボトルに溜めてた。見るからに怪しい液体だった。

盆栽や植木にやるときはうんと薄めているのだけれど、ほんのすこし腐臭寄りの醗酵臭がそこはかとなく香った。材料からしても、あきらかに「肥(こえ)」だ。

毎年それが匂うのは、住む人がいなくなって10年くらいは経つ近所の家の玄関わきの梅の木のあたり。そんな肥を撒く人はいないはずなんだけど。匂いに気づいて見ると梅の固い蕾が目に付く、そんなころ。


どうしてそんな動物的な生々しい匂いがするのか不思議。
植物の目覚めのエネルギーって想像するよりずっと猛々しくてパワフルなのかな。

この匂い、嫌いじゃない。香るのはほんの一瞬で、嗅ぎなおそうとしても捕まえられないくらいふっと消えてしまうし。
うんとうんと希釈して香水のベースにする麝香とか、こんな感じなのかも。

この匂いを嗅ぐと、冬も終わるなぁと思う。



お彼岸。盆栽の白梅には若葉。







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