2002年韓日ワールドカップで沸きかえった夏、‘美貌の女子高生殺人事件’と呼ばれた悲劇が起こる、その後の事件を取り巻く人物の人生を描く。19才だったヘオンが公園で死体で発見され、犯人が捕えられないまま17年の歳月が流れる―。
<東亜書店HP>
絶対的な美貌のへリム。
容疑者とされたハン・マヌ。その妹ソヌ。
ヘリムを車に乗せていたジョンジュン。
二番目に美しい少女テリム。
転校してきた同級生サンヒ。
へリムの妹ダオン。姉妹の母。
語り手はこの中の三人。
少女が殺された、それだけでもうミステリだけれど、犯人が誰か動機は、、そんなことはどうでもいいこと。
事件が起きて、何人かがいなくなって、日常が戻ってきて。それでも事件で穿たれた空白は、ひき攣れた傷痕のようにそこにあってひとを不安にさせる。
そうよ、あの子たちは事件に遭ったり留学したり転校したり、何らかの理由でいなくなっただけ。じゃあ、残された私たちは?死にそう。何にも変わってなんかない。こうやってずっと生きていくの?これが生きるってこと?事件にはそうして終止符が打たれた。
・・・・・
理由もなく過酷な生を強いられても、私たちはその中でか弱い虫のように、過酷なことにすら気づかず生きていく。
作者の後書き。
「人は平凡に生まれ、平和に生き、平穏には死ねない」
生きることは平らかではないと知ってしまうことのイラダチ、ヤリキレナサの物語、かな。
クォン・ヨソン 1965年生まれ ソウル
最近、アジア文学の棚の前をうろうろしている。
パク・ソルメの短編集「もう死んでいる十二人の女たちと」が読み切れなくて(返却期限が来てしまって)感想書かずにいたけど。
棚を眺めていたら、韓国の現代文学がとても充実していることに気が付いた。
そして、韓国の文学についてなにひとつ知らないってことにも気が付いた。
手にとって、カバーに紹介文があればそれを読んで、なければ冒頭の3行を読んで借りてみている。このあとも何冊か読んでみたい本がある。
一番近い隣の国の物語なのになぜいままで読もうとしなかったのかな。
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