「ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集」



きりん
きりん
だれがつけたの?
すずがなるような
ほしがふるような
日曜の朝があけたような名前を

ふるさとの草原をかけたとき
いっきに100キロかけたとき
一ぞくみんなでかけたとき
くびのたてがみがなったの?
もえる風になりひびいたの?
きりん
きりん
きりりりん

きょうも空においた
小さなその耳に
地球のうらがわから
しんきろうのくにから
ふるさとの風がひびいてくるの?
きりん
きりん
きりりりん


     「 きりん 」 まどみちお




き り ん という音。

哺乳綱偶蹄目キリン科キリン属の偶蹄類と分類されて名付けられる以前。
あの首の長い黄色に茶色のだんだら模様の、優しい大きな目をしたどうぶつは
き り ん き り ん き り り り ん
と鳴りながらそこにいたんだねぇ。ふふふ。


   ・・・・・


意識して詩を読みに行くということがあまりないので、うん、こういう本も良いなぁと思う。
高野文子の「るきさん」の新装版がでて、そこから高野文子が挿絵を描いているこの本にたどり着いた。創作童話、というくくりなのかな。
先日の高階杞一の詩もこの本に載っていた。


「ぼく」は「きみ」に詩集を手渡す。
「ここんとこ、読んでみな」と言って。




きみは、あっというまに、おとなになる。
そして、さまざまなことを、わすれてしまう。
この夏におこった、わすれたくないことも。ふたりで読んだ詩も。




大人になってからも忘れてばっかりだ。

「きりん」を読みながら、幼稚園のときにキリンの絵を描いたことを思い出した。ピンクの画用紙に、黄色いキリンをクレヨンで描いた。その絵はアルバムの表紙に加工されて卒園の記念にもらったのだった。気に入っていて、結構大きくなっても持っていたと思うのだけど、さすがに今はもうない。取っておけばよかったとまでは思わないけれど、ほらね、いろんなことを忘れて捨てて生きている。





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