父が入院していた病院の向かいに小さなパン屋があって。
「あすこのパウンドケーキが美味しいんだよ」と何度となく父が言っていた。
絶飲食が解かれたら珈琲とそのケーキを食べるのを楽しみにしてた。

食べられなかったけど。




近くに行ったのでお店に寄ってパウンドケーキを買った。
たまにしか行かないけど、行ってご高齢の主人夫婦が揃っているのを見るとホッとする。ここでもPayPayが使えるようになってた。そういえば建て替えられてお店が新しくなってから何年経つかな。父が知ってるのはモルタル二階建ての昭和なパン屋だった。

ケーキを買って自転車を走らせていると、懐かしくて泣きそうになる。
10年経ってもこんな気持になる。お父さんはいないけどいる。



ついでのように思う。
階下のひとはこんな風に思い出されることはないんだなと。すこし可哀想だなって思ったけど、それは私もそうだ。
この世界から消えて10年経って、思ってくれるひと、いないな。
別に悲しくもないけど。ふと思っただけ。





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