「タンゴレッスン」
「タンゴレッスン」
 
 
映画監督サリー・ポッターとダンサーのパブロ・ヴェロン。
サリー・ポッターがタンゴにのめり込んで作られたドキュメンタリーなのかと思ったら、これはフィクション、静かな情熱に導かれる大人の物語だった。



タンゴを習いに行くサリー・ポッターにとってパブロは師で、タンゴとパブロに魅了されてゆく前半と、パブロを出演させて映画を撮ることを決めて映画監督の顔になってゆく後半でふたりのパワーバランスが微妙にかわる。
ふたりの関係が仕事なのか恋なのか入り混じった段階で大喧嘩をして、もう一度関係を結び直すシーンが写真上1枚目。サン・シュルピス寺院の壁画の前でとるポーズ。
美しいシーンだけど、どういう意味があるんだろうと思う。
良いなぁと思う映画は、背景とかいろいろ調べたくなる。

この壁画はドラクロワの「天使とヤコブの闘い」。天使との戦いに勝ったヤコブは新しい名前を与えられる。イスラエルと。名の意味は「神に挑むもの、神に勝つもの」
サリーもパブロもユダヤ人で、パブロはどこにいても異邦人だという想いを抱いている。そしてタンゴのリーダーとパートナーのふたり。師であるパブロに挑みやがて勝利するサリー。

大人なんだよね。ほんとに。
そしてプロフェッショナル。ダンサーとして、映画監督として。
そしてそして、タンゴって、そういう大人のダンスなんだなぁ。

ブエノスアイレスのタクシーのおじさんが言う。
「精一杯生きろ。そして苦しめばタンゴがわかるさ」
ため息。

複雑なステップを自分のものにしパブロのパートナーとして遜色なく踊れるまでになり、ミロンガ(タンゴを踊るためのサロン)にでかけ、誘われるままに流麗なステップを踏むサリーの女っぷりが良い。
タンゴステップに身をゆだねながらもどこか冷静。

偶然と運命とどちらを信じる?と問うパブロに答える。
「偶然を信じるわ。運命はあとから作られるのよ。意志の力で」
サリーはイギリス人で、映画監督なんだなぁと思う。
そして大人の女。




コメント

hana
2022年1月23日18:02

美藤さま^^

> 「偶然を信じるわ。運命はあとから作られるのよ。意志の力で」の後のセリフが「私は無神論者」というような、だったかしら? この映画、2年ほど前に観ました。

私にはよく理解できませんでしたが、ほぼモノクロで映像が観やすかった印象があります。そしてただただダンスを観ながら、体力要るよね〜とため息ついていました(笑)

美藤
2022年1月24日0:01

そうです。カフェで向かい合って話すシーン。
「もちろん無神論者よ」だったかな?で、その後に「私はユダヤ人よ」と続いて、沈黙の後パブロもユダヤ人だと明かし「どこにいても異邦人」という話になります。最後は手を取り合うふたりの頬に静かにひと筋涙が伝う…そんなシーン。ドラクロワの壁画前のシーンにも繋がるシーンですね。

こういう背景は観てから調べないとわからないし、調べてもたぶん理解はできてないだろうなぁと思います。
タンゴが気になって観ましたが、観て良かった。なんだろう、なにかとても惹かれる映画です。

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